「私は絶対に許さない」を読んでみた感想

傷だらけで悲しい目をした少女と、鋭い眼光に赤い口紅が印象的な女性の写真に「私は絶対に許さない」という赤字の表紙は目を引きます。15歳で集団レイプに遭った少女が「男」(男を男という性別で一括りにしている印象を受けた)に対して復讐心を抱きながらも、風俗嬢として身体を売って生きるというもので、これは被害者の手記であり実話です。

あまりにもショッキングな内容なので、裏表紙に書いてある通り「15歳で集団レイプに遭ったのなら、普通は男性嫌悪になるだろう。自ら風俗嬢になるなんて」と疑問に想い、どのような思いを持って、どのような過程を経てそのような人生になったのか興味が沸いてこの本を手に取った次第です。

感想としては、「男」に対して復讐を誓いながらも、自身を売ったり、レイプ犯の一人の義理の父である早田と仲良くなったり、一見すると支離滅裂な行動に思えますが、読んでいると曲がりくねりながらも見事な1本道で繋がっており全てが腑に落ちます。どこぞのフィクションとは違い、きれいごとなどは皆無であるからこそ、腑に落ちてしまったところに人間臭さを感じます。そして最後の方の章のタイトルにもなっている「人間は皆、唯一無二の奇形である」という彼女の祖母の言葉に激しく共感しました。誰もが違う顔、違う性格、異なる世界観も持ち、誰かの常識は誰かの非常識であり、その逆も然りです。まさに誰もが唯一無二の奇形なのです。「個性」などという文言ではなく、「奇形」という比喩は言いえて妙であります。

どうしてレイプ被害者から風俗嬢になったのかというと、家庭環境も要因の一つにあるのではと思いました。というのは被害の翌日、朝帰りをした娘に対して両親は心配するどころか、罵倒したり張り手をするという仕打ちをしたというのです。それに、「家庭という小さな国家の掟に背いた者には、容赦なく厳しい私刑が下される。国家反逆罪がまかり通る家庭だったのだ。」という一文などから、幼少期から閉塞的な環境で両親の愛情を受けていなかったことが考えられます。そのように自分を否定されるような環境下で育った子供は自己承認力が低くなる傾向にあります。

自分が被害者であることを自覚できないほど自己承認力が低い彼女は、被害後に両親に心配されないどころか怒鳴られたり、噂が立って同級生にからかわれても、「自分が悪いのだ」と正当化して被害者であるという自覚が持てずに余計に傷ついているような印象を受けました。援助交際相手の早田の事を「自分を買ってくれる=認めてくれる存在」と無意識で思いこみ、彼女は買われることにより自己同一性が担保するというマインドセットが作られ、風俗嬢への道にシフトしていったのかもしれません。

後に看護師を目指したのも、障碍者施設のボランティアとして活動する上で、自分を必要としてくれるつまり認めてくれる人が居たからです。

「知的にハンディキャップがある人は、幼い頃から虐げられてきていることが多いのよ。」
「源氏名でない名前で呼ばれることがこそばゆい。ここに居る人達は、みんな寂しいのだ。構って欲しくてたまらないのだ。」

読み終わったら胸糞悪い気持ちになるのではと覚悟していましたが、そんな事は無く、最終的には彼女なりの生き方が見つかり、この本を書くことができて、どこか救いのある気持ちで読み終える事ができました。この本は、万人受けはしなさそうですが、ショッキングな実話が読みたい方や、このような極めて特殊な状況下における心理に興味がある方にオススメします。なぜレイプ被害者が復讐心を抱えながらも風俗嬢へと変貌していったのか、最後まで読みすすめていくうちに、その疑問が腑に落ちる形で理解できました。とてもとても貴重なノンフィクション作品です。

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