リテラシの格差がキャッシュレスの賛否を分ける

現金先進国日本

世界各国でキャッシュレス化が進んでおり、お隣の韓国では89.1%がキャッシュレスであり、日本は18.4%とインド(38.4%)よりもキャッシュレス後進国となっている。
経済産業省「キャッシュレスの現状と今後の取組」

日本でキャッシュレスが普及しない理由として、治安の良さや偽札の少なさなどが資料では挙げられているが、それに加えて教育の問題もあると思う。というのも日本は昭和初期に戦費の財源を確保するために「貯蓄が美徳である」という刷り込みを行っており、その頃から現金を持つというマインドセットが出来上がったのではないかと思う。

ちなみに「江戸っ子は宵越しの銭持たぬ」という言い回しがあるように、江戸時代の人々は貯蓄の習慣が少なかったと思われる。最近ではバブル崩壊後の長いデフレによって現金での貯蓄が合理的になっていたことも現金主義に拍車をかけた。

現在に至るまで殆どの人々が貯蓄の本質を知らないまま現金を崇拝する教育を受けてきたのではないだろうか。現金主義は日本の技術力の高さと相まって、偽造防止のためのホログラムや、札を識別管理する非常に高度な精密機器「ATM」など、現金の為だけの技術革新が進んでいった。そして令和6年(2024年)をめどに新札が発行されるという。

未だに新札が発行されるのだから、キャッシュレス後進国というよりは、現金先進国と言ったほうが良さそうだ。
しかし、その現金には富国強兵を目指して頑張っていた時代の偉人や建物が描かれていて、まるで「あの頃のワシは凄かったんじゃ」と武勇伝を語るおじいちゃんのようである。

キャッシュレス賛否を分けるのはリテラシーの格差では

博報堂によるキャッシュレスについてのアンケートがある。2017年12月という少々古いアンケート結果だが、中々面白い内容になっている。
博報堂「お金に関する生活者意識調査」

キャッシュレス賛成:48.6%
キャッシュレス反対:51.4%

全体的にはほぼ半々であり、年代別の差はあまり無い。男性の方が賛成が多く、若い女性の方がキャッシュレス反対派が多いという結果になっていた。

賛成の理由

  1. 現金を持たなくてもよいから
  2. 利便性が高いから
  3. お得だから
  4. やりとりがスムーズだから
  5. 管理しやすいから

反対の理由

  1. 浪費しそうだから
  2. お金の感覚が麻痺しそうだから
  3. お金のありがたみがなくなりそうだから
  4. 現金は必要だから
  5. 犯罪が多発しそうだから

この結果を見て賛成と反対を分けているのはリテラシーの格差ではないだろうかと思った。

金銭感覚の問題でありキャッシュレスに責任は無い

「浪費しそうだから」とか「お金の感覚が麻痺しそうだから」というのはキャッシュレス以前の金銭感覚の問題である。自分の金銭感覚の無さを現金の残量を確認することでカバーしているということだろうけど、キャッシュレスであれば、スマホなどでいつ何処でいくら使ったか、いくら残金があるかを確認できる。もし数字が見えていても浪費してしまうというのであれば自分の衝動がコントロールできないという事であり、キャッシュレスに責任は無い。

現金に額面以上の価値は無い

「お金のありがたみがなくなりそうだから」というのは現金を誤解している。決済の形が変われど等価交換である。現金には書かれた額面以上の価値は無い。現金を崇拝するあまり現金に額面以上の価値を感じてしまう人も少なくないのだろうか。

需給のバランスで貨幣の形は変化する

「現金は必要だから」にカテゴライズされる具体例として次が挙げられている。

「システムがダウンして混乱を招く事態になった時、やはり現金はあった方がよい」
「電脳世界の通貨は何らかの障害や天災が発生した際、使い物にならない」

保証できないほどシステムがダウンする混乱は相当な混乱であるだろうから、現金以前の問題になると思う。それほど大きな心配事は考えないほうがいい。なぜなら現金を持っていても日本がいつ潰れるか分からないのだから。もしシステムが使い物にならなくなったとしたら、需給のバランスによって代替の通貨ができあがるだろう。例えば、ゴールドが紙に代わったように貨幣は自在に形を変える。

キャッシュレスで強盗が減る

「犯罪が多発しそうだから」にカテゴライズされる具体例として次が挙げられている。

「暗証番号や個人情報が流出して、犯罪が起きる可能性がある」
「システムの脆弱性などで不正が行われる心配もある」

現金の方が盗難や強盗にあうリスクが高いし、実際そっちの方が被害額は大きい。スウェーデンではキャッシュレス化により銀行強盗が10分の1になったという。(別の種類の犯罪は増えたが)また、例えば現金は紛失・盗難しても戻ってこない可能性が高いが、クレジットカードであれば確実に全額戻ってくる。

お金の本質

お金の本質は価値のものさしであり価値の媒体であり、価値そのものでは無い。我々は価値を貨幣によって回しているが、実際に回っているのは商品・サービスや信用である。

お金は時代背景によって貝殻や石、貴金属、紙や金属というように形を変えてきた。現在、キャッシュレス化するか否かが議論されているが、それはお金の形が「紙や金属」から「データ」に変わろうとしているパラダイムシフトの瞬間である。

まだキャッシュとキャッシュレスのハザマが存在するため、様々な不都合が起こっているが、キャッシュレスに完全移行できたら素晴らしいシステムだと思う。賛否は半分に分かれているが、反対派の意見を読んでみると、多くはプラットフォームの問題ではなく各人のリテラシーの問題のように思える。

お金の形は時代と共に変化してきたため、キャッシュレスも一時的な流行りなどではなく、いつか完全に移行するものだと思う。そして何れは、お金が仲介せず価値そのものが回るような経済、個人の信用がそのまま通貨になるという世界になると思う。

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